10月も終わりに近づき、ここ聖域でも秋の気配が濃厚になってきた。
青空を見上げてみれば夏とは違う雲の形を見る事が出来、星空を見上げてみれば冷え込む空気を受けて星の瞬きも美しさを増している。一日中私の目はほぼ紙面にならぶ文字を追いかけているが双児宮と教皇の間へ移動する時間だけは違う。四季の移ろいを知らせる風の温度を肌で感じ、自然の雄大さをこの目で確かめ実感するのだ。
秋は非常に過ごしやすい季節でもある。
夏の厳しい暑さの中を通り抜けて辿り着く季節だからなのか、その冷たく清々しい空気に私は癒され、そして活力を得る事が出来るのだが・・・私の同僚の中には少々この秋の空気に癒され過ぎの者達が多いようだ。
実名を挙げる事は控えたいが私のイタリア人の同僚は、執務が円滑に進むようにとのアテナの配慮で最近導入されたパーソナル・コンピューターに夢中になっている。何かに夢中になるという事は人生にとって非常に有意義な事であり、私も彼が知的好奇心を持つ事に感心していた。
しかし、私は見てしまったのだ。
彼が私の大切な弟とリンゴの名を持つ同僚と共にいかがわしいページを執務中に堂々と眺めていたのを・・・!!!!そこには悩ましげなポーズの女性の裸体が写っていた。何という事だ!個人の持ち物で楽しむならば私も口を挟みはしないが、教皇の間の一角でしかもアテナの優しき配慮によって我々に贈られた品を使い、尚且つ重要な職務中に私の目の前でする事ではあるまい!・・・私は一体どこで教育を間違ったのだろうか?私が苦労をたくさんかけ、扱き使ってしまったからだろうか・・・もしかしてこれは彼らから私への無言のサインなのかもしれん。共に過ごす時間が無くて寂しいのだろうか・・・だが私にはこの聖域という組織の活動を円滑に進めなければならないという責務があるのだ・・・。
そもそも私の自由な時間が少ないのは上司や同僚の仕事までやらなければならないからだ。私のせいではない!そうだ。カノン、デスマスク、ミロよ。私のせいではないぞ!お前達がそんな事をせずさっさと書類を片付ければ何も問題は起こらんのだ。そういえば思い出したぞ。カノン!!!お前は俺の机にさりげなく自分の書類を置いていっただろう?俺が気付いてないとでも思ってるのか?覚えていろ。この報復は必ずしてやるからな!!!
他の二名もだ!デスマスク、今月俺達が執務で使ったインターネット代は全てお前の給料から引いておいたぞ。ミロ、仕事の合い間に隠れてつまんでいるスナック菓子は全部没収して貴鬼へ渡している。お前から提出された書類の端がもう菓子の油分で透ける事がないのかと思うと寂しささえ感じるがな・・・ククク。パソコンのキーボードの隙間にこれ以上カスが入るとまた経費が掛かる。先月お前が壊した分はデスマスク同様に給料から引いてあるからな。
・・・というか俺はなぜ貴重な時間を割いてこんなものを書いているのだ馬鹿馬鹿しい!そもそも連絡係は俺の役目じゃない。チッ、もう止めだ。ククク・・・しかし、今までの内容を全く違う事に捏造したらアレはどんな反応をするだろうな?面白そうだ。
(中略)
どうやらまた暴走してしまったようだ・・・。
気が付くと、書いた覚えの無いページが山程あった・・・私はまたこのまま影に飲み込まれてしまうのだろうか?私がそんな事になればまたこの聖域が(以後、非常に長い為に割愛致します)
編集部注)
※全てを雑誌掲載するには長過ぎ、不適切な部分が多大に含まれていた為に内容抜粋でお届けしました。
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